User:Meosorasu/花摘み
庭に一人きりだった。
「ねえ、彼はまだ私のことが好き?」
その人は花を持って聞いた。
「おそらく、最初から好きになったこともないだろう」
と自分で答えた。
その人は花びらを一枚ずつ引き抜いて、
「はい、いいえ、はい、いいえ……」
最後の花びらが引き抜かれるまで、繰り返した。
「はい……いいえ。あぁ、『いいえ』か」
その人はちょっとがっかりしたらしい。
「いいえって、どういう意味?」
「『彼は私のことがもう好きではなかった』か、
或いは、『好きになったこともなかった』か」
「仕方ない、もう一回やってみよう」
その人は言いながら花を摘んで、そして同じ質問を再びした。
「ねえ、彼はまだ私のことが好き?」
「はい、いいえ、はい、いいえ……」
「いいえ、……はい。あぁ、『はい』だ!」
その人は一瞬嬉しげな顔をしたけれど、すぐさま不安そうに聞いた。
「じゃあ、ただ忙しすぎて、私のメッセージに返事ができないだけなの?」
「あぁ、困ったなぁ。もう一回やってみよう!」
もう一回やってみよう
もう一回やってみよう
なんどもなんども
「はい」と「いいえ」の音が庭に響き渡っていた。
いつの間にか、庭の花は全て摘み取られてしまった。